指先で触れたきみの顔は
思っていたよりちいさくて
でこぼこで、ぬれていた
「どうしてぬれているの?」と聞くと
「暑くて水を浴びたんだ」という
そうか、今は夏なんだ
きみが連れてきてくれたこの場所は
やさしい風がふいていて
空気がおいしくて
熱を感じなくなるほど
心地よくなっていた
いつもより少し多く息をすえる
それだけがうれしくて
ぼくの指先が
きみの顔を触り続けていたことを
わすれていた
「あ、ごめん」
きみはなにも言わなかったが
静かにうなずく気配を感じた
それからぼくたちは
ずっとずっとそこにいた
風向きが変わっても
雨が降っても
虫がからだをよじのぼっても