「ふたりとも、朝からよくそんなに走れるね」
「ひかってるあいだは、思いっきり走れるんだよ」
ちいさなからだの可愛らしい兄弟が、ぴかぴかと光る靴をはきながら、かけてゆく。
春の香りは、そんな2人をやわらかく包み込んで、連れ去った。
朝目が覚めて、一歩外へでると
あたらしい世界がうまれている。
昨夜とは違うにおい、おとも、風のつめたさも。昨日とは別の鳥が飛んできて、鳴いている。
土の中にいた種が、芽を出している。
目を閉じているこの数時間の間に、いったい何が起こっているのだろう。
暗闇のなかで、いくつもの生命がきえて、またうまれている。
すぅー。ふぅー。
私は朝のひといきで、この巡りをほんのすこし感じとる。
「あのことあのこはいなくなって、きみがうまれてきたのね」
ありがとう。ようこそ。
そんな「おはよう」を告げたころ
角を曲がってちいさな兄弟がもどってきた。
「ねえねえ、ちょっと来てみて。あっちにおっきな公園があった!」
「えー、保育園遅れちゃうでしょ」
「いいから、いいから」
母の手をひいて、ふたりはまた駆けてゆく。
ぴかぴかとひかりながら、思いっきり駆けてゆく。